口述試験想定問題の作成
TAC講師が開催してくれた練習会の中で、私たち5名の2次記述試験合格者はそれぞれの事例について深く理解するためのグループを作りました。その中で、先生からは自分たちで想定問題を作成することを勧められました。想定問題を作成することで、与件文を詳細に読み解き、より深い理解を得ることができるというアドバイスに従い、私たちは5人で事例を分担し、2~3日かけて問題を作成することにしました。
この想定問題作成のプロセスは、予想以上に興味深く、挑戦的でした。試験中に見た与件文を再検討し、それをさらに詳細化する作業は、私たちの事例理解を飛躍的に高めることに繋がりました。80分で読んでいた文章を一言一句まで追求する作業は、頭の中での抽象的なイメージを具体化するための効果的な方法でした。
口述試験では試験中に問題用紙を見ることができないため、事例の詳細を念頭に入れておくことが必要です。そのため、想定問題を作成する際は、単なる文章の理解ではなく、情景として描くことが重要でした。これによって、本番までの準備がさらに充実することができました。
また、このグループ作業は個人だけでなく、合格者仲間との協力体制を築く貴重な経験でもありました。5名と共に取り組むことで、お互いの理解を深め、共通の目標に向かって励むことができました。さらに、その後に参加したタキプロやLECでの想定問題集も役立ち、本番に向けた準備がさらに進みました。このような集中した作業を通じて、試験に向けた準備がより具体化され、合格への自信も高まっています。これからも仲間と共に助け合いながら、目標に向かって頑張っていきたいと思います。
自宅での練習の日々
一通りの材料をそろえ、総数303問の問題を前にして、さてこれをどうやっていこうかと迷っていました。なにせ、本番まで一週間しかありませんから、一つ一つじっくりと理解し暗記している時間はありません。それに、今までの1次試験、2次試験ともに筆記試験であったため、内容自体は異なるものの机に向かってペンをもって紙に書きながら学習するという動作しかしたことはありません。今度は、口述面接試験であり、筆記試験と同じようにはいきません。
考えた挙句、やはり、本番同様の練習を繰り返し行い、体になじませることがよいだろうと思い、家族に協力を要請しました。一週間、一日2事例ずつを7セット。朝の時間は、想定問題集の問題と解答の音読を繰り返し頭にインプットすることにしました。夜には、本番形式の対面状態で問題を出題してもらいそれに対して回答をする形式で45分×2事例を行いました。
自宅練習初日、インプットを順調に終えているため、練習会のような全く回答できないようなさんざんな状態にはならないだろうと思っていました。ところが、練習会でやったときと同じ状態で、インプットしているはずのものもまったく言葉が出てこないのです。なぜでてこないのか。まったくわかりません。とはいえ、解決方法も浮かびません。とりあえず、もう出てくるまで繰り返すしかないと思い、まずは、解答を見て答えるところから始めました。
解答を見ては話す、見ては話すということを繰り返すうちに徐々にですが、言葉が出てくるようになり、解答らしきものを発言できるようになってきました。おそらく、今思うとですが、耳で聞いて脳で答えを導き出し、それを口頭でアウトプットするという作業自体を診断士試験の中でやっていなかったため、口頭でのアウトプットに対応できていなかったのだと考えています。
とにかく、ようやく答えを口にすることはできてきましたが、まだまだおぼつかない状態です。それに、時間を計測してもらっていましたが、回答時間2分に対して1分以上足りていない状態ということがわかりました。さらに、しゃべるスピードも速すぎて発言の内容が聞きとってもらえていないこともわかりました。
このままでは問題の得手不得手に応じて回答の仕方や回答時間が変わってきてしまうし、本番では緊張から、無言のまま時間が過ぎてしまうという、不合格一直線の状態に陥ってしまうと思い、回答のルーティンを決めました。それを決めてしまったほうが、本番でも緊張せずに練習と同じペースで解答できると思ったからです。問題を聞かれたら、まず、問題をリピートし、「○○ということですね。」ということにしました。それをすることで、なにも答えが出てこなくても話しだすことができます。さらに、問題をリピートしているうちに、回答が頭に浮かんでくるといこともわかってきました。次には、問われる内容を答えただけでは、2分の回答時間に対して足りていないということもわかってきたので、答えた内容に対して、それを補うような補足の情報を言うことにしました。
回答フォーマットとしては、「○○ということですね。それは、××が△△です。△△というのは、□□です。」という形です。さらに、ゆっくりとはっきりとしゃべることを意識して、2分の基準を作っていきました。フォーマットの完成です。このフォーマットさえできてしまえば、あとは、問われた質問に対する回答を覚えて、フォーマットに乗せて話すだけです。
繰り返し問題を回答して言っているなかで、事例企業に対しての理解も深まってきていましたので、たとえ変化球があったとしても、事例企業の様子や状況を踏まえて、それに即した内容を、多少問題の意図とはそれていても回答できればいいという余裕も生まれてきました。
そうして、用意した想定問題に対して、想定問題に記してある回答そのものでなくても、当たらずとも遠からずの回答をできるようになり、ようやく手ごたえを感じられ、本番を迎える準備ができたと安堵しました。
筆者が口述試験や面接の練習方法として、定めた練習方法を記しておきます。
一週間でできる口述試験の練習方法
- 予想問題および回答集を可能な限り収集/作成する。
- 回答時間を考慮しながら自分なりの回答フォーマットを決める。
- 家族や友人に協力してもらい、本番通りの模擬試験を時間の許す限り繰り返す。
- 模擬試験の時は、回答内容と回答の様子、態度、声色、スピードなどをチェックしてもらう。
学習した想定問題
口述試験本番まで一週間の間に練習した想定問題の総数303問を記しておきます。この中から、当日出題された5問の問題のうち3問が出題されました。たとえ同じ問題が出なかったとしても、これくらいの数の問題をこなしておくと本番でも迷いなく答えが口から出てくると思います。
令和5年度2次口述試験想定問題
- TAC想定問題集 40問
- LEC想定問題集 90問
- タキプロ想定問題集 139問
- 受験生同志で作成した口述想定問題 34問
ご参考までに、受験生同志で作成した口述想定問題を記載します。
作成した想定問題 事例Ⅰ
・A社経営者は経営方針を見直した際に、社内では接客リーダーとともにチームづくりを行いました。A社経営者はどのような点を意識したでしょうか。
・X社の従業員は、担当業務に専念するのみで、担当を横断する意思疎通が不足しています。セクショナリズムを防止する人事施策の例を挙げてください。
・A社ではベテランの厨房責任者が厨房担当の若手従業員を育成する役割を果たしました。OJTのメリットとデメリットを述べてください。
・A社の接客リーダーはA社社長からの信任が厚く、将来は自分の店を持ちたいと思っていました。X社との経営統合にあたって接客リーダーにはどのようなことが期待できますか。
・競争戦略と成長戦略の違いについて説明してください。また、A社であればどのようにするべきですか。
・A社が総花的なメニューをやめ手打ち蕎麦専門店にしたことのメリットとデメリットについて、説明してください。
・A社とX社の経営統合に際し、不安になったX社の正社員やアルバイトの退職を防ぐための施策について、具体的な効果とともに説明してください。
作成した想定問題 事例Ⅱ
・B社の行ったターゲットマーケィングについて、市場細分化の観点からお答えください。
・現在のB社の製品戦略について述べてください。
・成長に伴う買い替えや、より良い商品への買い替えも保護者には金銭的な負担となっています。買い替えの負担を理由に野球をやめてしまう子供や多様なニーズにこたえるため、どのような販売方法を導入すればよいですか。
・女子の軟式野球が盛んになってきたことに着目し、女子メンバー獲得に苦しんでいるチームを支援し、女子向けの野球用品の提案力を高めるため、新規顧客としての女子チームの開拓を行うB社に対しどのようなアドバイスを行いますか。
・各少年野球チームの監督との密接なコミュニケーションを図るにあたって、各チームのデータ管理、メンバーや保護者の要望の状況把握、及び相談を受けた際のアドバイスの対応方法を助言してください。
・B社は基本的には2000年代以降からは野球用品に品揃えを特化しています。その一方でテーピングやサポーターなどのスポーツ関連用品の取扱いも継続しています。B社がわざわざスポーツ関連用品の取扱いも継続している理由としてはどのようなことが考えられるでしょうか。
・B社が大型スポーツ用品量販店との価格面競争を回避し、品揃えと提案力で野球用品の高付加価値化や差別化を図る路線に舵を切った要因の1つとして、スタックインザミドルを回避することが挙げられています。スタックインザミドルとはどのようなものか説明してください。
作成した想定問題 事例Ⅲ
・C社は、食材や調味料の在庫量が増える傾向にある。一般的に、在庫量が多い時の問題点としてどのようなことが考えられるでしょうか。在庫量が少ないときの問題点と対比して教えてください。
・C社の製品開発部に採用された外部人材は、中堅食品製造業で製品開発の実務や管理の経験があります。この外部人材を採用・活用するメリットは何でしょうか。
・C社は、多品種少量生産での形態を採用しています。多品種少量生産のメリットとデメリット、課題について教えてください。
・高齢のパート従業員が退職し増加する受注量の対応策の1つとして、従業員の多能工化があります。多能工化はどのようにして行うべきでしょうか。多能工化による効果とともに教えてください。
・C社では製造日に必要な食材や調味料を前日に準備していますが、納品遅れが判明して販売先に迷惑をかけたことがあります。「販売先に迷惑をかけた」とは具体的にどのようなことでしょうか。改善策と共に教えてください。
・C社ではメモ程度のレシピや食材・調味料の入出庫記録のデジタル化を進める予定です。デジタル化の具体的なやり方と、デジタル化によるメリットについて教えてください。
作成した想定問題 事例Ⅳ
・D社が収益性を向上させるための施策を説明してください。
・D社は卸売会社を通さずに直接製品を卸しているが、直接卸のメリットとデメリットを説明してください。
・D社はECサイトを通じて美容液の定期購買サービスを行っている。定期購買サービスの企業側のメリットとデメリットを説明してください。
・通常、設備投資の経済性計算では、正味現在価値法が多いが、そのほかの評価方法のうちIRR法についてその特徴とともに説明してください。
・D社は将来の成長を見込んで、当面は人件費などの削減は行わない方針だが、人件費削減を行わないメリットとデメリットを説明してください。
・割引計算に用いる、複利現価係数と年金現価係数の違いについて述べてください。
・CFを現在価値に割り引く際、複利現価係数と年金現価係数を用いる場合があります。複利現価係数と年金現価係数について説明してください。
・D社が男性向けアンチエイジング製品を自社生産するための資金確保にはどのような方法があるか、教えてください。
・最低要求収益率について教えてください。
・D社が新たな製品分野に進出する際の財務的リスクについて説明してください。
・D社の現状についてSWOT分析してください。
・D社において、令和4年度は前年より損益分岐点比率が悪化しました。そのため、来年度においては損益分岐点比率を改善したいと考えています。損益分岐点比率の改善策にはどのようなものがあるでしょうか。損益分岐点比率が改善したときの効果とともに教えてください。
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